研究課題/領域番号 |
09460121
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
金丸 義敬 岐阜大学, 農学部, 教授 (50111795)
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研究分担者 |
海老名 卓三郎 宮城県立がんセンター研究所, 部長
長岡 利 岐阜大学, 農学部, 助教授 (50202221)
源 宣之 岐阜大学, 農学部, 教授 (10144007)
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キーワード | 牛乳 / ミルクムチン / 糖タンパク質 / ウイルス中和活性 / コレステロール / 抗がん作用 / 成長促進作用 / 培養細胞 |
研究概要 |
ミルクムチンは乳に含まれるムチン型糖鎖を結合した巨大な糖タンパク質会合体を指すが、歴史的に人乳で早くからPEM、HMGP等の様々な名称で知られていたものであり、最近になって主成分がMUCl遺伝子産物であることが明らかにされたものである。この人乳ムチンはがん関連抗原構造を発現することから医学分野で注目されてきたが、一方で、病原ウイルスや細菌の増殖を強力に阻害する作用を持つことや、動物細胞の増殖を制御する機能を持つことも報告されている多機能性の成分でもあり、母乳に固有な生体防御機能と密接に関連していることが指摘されている。我々はこの人乳ムチンと類似の成分が牛乳中にも存在していることを明らかにしているが、抗病原微生物作用などの生理機能面でも類似した多機能的な性質を有することを明らかにしつつある。本研究では、この牛乳ムチンの生理機能を実験動物と培養細胞を用いて評価することを目的とし、次のような結果を得た。 (1)牛乳ムチンの調製-限外ろ過により分画・濃縮した乳清タンパク質をSepharose CL-2Bゲルろ過で分画し、void容(Fl)を牛乳ムチンとした。(2)抗ウイルス作用-MA104細胞に対するヒトロタウイルスの感染を検討し、牛乳ムチンが強力な阻害作用を持つことを明らかにしたが、マウスを用いた動物実験ではこれまでのところ下痢抑制作用は認められていない。(3)抗がん作用-マウスの二重移植腫瘍系を用いて牛乳ムチンの抗がん作用を評価した。原発(右側)腫瘍部位に牛乳ムチンを投与すると、投与していない左側腫瘍の退縮も認められ、全く消失する例も見られた。(4)コレステロール低下作用-Caco-2細胞によるコレステロール吸収が共存する牛乳ムチンによってどの程度影響を受けるかを評価したところ、すでに特定保険食品としてその効果が公に認められている大豆ペプチドに比べてもはるかに強力な吸収抑制作用が認められた。(5)成長調節作用-IEC6細胞やCaco-2細胞の増殖に及ぼす牛乳ムチンの影響を評価したが、これまでのところ顕著な調節効果は認められていない。
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