研究課題/領域番号 |
09460125
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
林 良博 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (90092303)
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研究分担者 |
小川 健司 理化学研究所, 動物試験室, 研究員 (50251418)
九郎丸 正道 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (00148636)
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キーワード | 精巣 / 精上皮 / 実験的腹腔内精巣 / イルカ / 精細管 / 精細胞 |
研究概要 |
本年度はスジイルカ、ハナゴンドウおよびバンドウイルカの3種のイルカの精巣組織について、その微細構造を比較検討した。同時に腹腔内精巣をもつイルカ類に対するモデルとして、実験的腹腔内精巣による精子発生不全マウスを作出し、その細胞動態について観察した。加えて精子発生不全ハムスターも作出し、比較観察の材料とした。 今回用いた3種のイルカの共通した特徴として、まず白膜の延長が精巣実質内に侵入し、精巣の支柱となっていることが上げられる。イルカの精巣は、ウシ、ウマといった大型家畜にそれに比べてもはるかに大きく、こうした結合組織の侵入により精巣の形状が維持されていると思われる。間質の占める領域は比較的乏しく、精細管断面においてはしばしば複数の精上皮ステージが認められた。またバンドウイルカの精上皮は、その細胞層が他の2種のイルカに比べて薄い形態を示した。 実験的腹腔内精巣処置を施したマウス精上皮は、処置後1週の間に大きな形態学的変化を起こし、多数の変性精細胞に核濃縮、細胞質の好酸性変化および濃縮が認められた。TUNEL法を用いた結果、検出される細胞が確認された。電子顕微鏡による微細形態の観察でも、細胞質の凝縮、核の濃縮などが認められ、これらの変性細胞はアポトーシス様の過程を経て死に至っている可能性が示唆された。処置後8週になると、精上皮は薄層化し、セルトリ細胞、精祖細胞および少数の精母細胞を残すのみとなった。HSP70.2に対する抗体を用いて、その発現の変化を観察したが、この系における精細胞の変性・脱落には直接関与しないものと考えられた。 短日条件により精子発生不全としたハムスターの精巣について検討した。精巣重量、精細管径は処置後13週で最小となり、この時期、精上皮はセルトリ細胞、精祖細胞および少数の精母細胞からのみ構成されていた。
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