第一試験では14ヶ月の黒毛和種肥育雌牛7頭を供試した。14ヶ月齢から26ヶ月齢まで2ケ月間隔で採血を行い血清中のレプチン濃度を測定し、肥育過程における血清中レプチン濃度変化を検討した。第二試験では肥育終了直前の21ヶ月齢の8頭の黒毛和種去勢から採血を行い、上記と同様の方法で血清中レプチン濃度を測定し、と殺後日本格付協会により評価された枝肉形質と血清中レプチン濃度の関係を検討した。14ヶ月齢から22ヶ月齢まで血清中レプチン濃度は徐々に上昇し、22ヶ月齢では14ヶ月齢の2倍程度の値となったが、その後血清中レプチン濃度は大きな変化を示さなかった。出荷直前の血清中レプチン濃度と脂肪交雑との間に有意な(P<0.05)正の相関関係が認められた。一方、血清中レプチン濃度と枝肉重量、皮下脂肪厚、胸最長筋面積、バラの厚さおよび歩留基準値との間に相関関係は認められなかった。なお、本試験で共試した一頭の去勢牛は肥育後期に飼料摂取が減少し、体重増加が認められなかった。また、脂肪交雑、皮下脂肪厚、枝肉重量も他の個体と比べて低い値であった。この個体における血清中レプチン濃度は他の牛と比較すると低かった。以上の結果から、黒毛和種牛において血中レプチン濃度は肥育に進むにつれ上昇することが示された。この上昇は体脂肪量の増加に起因すると考えられた。しかし、肥育後期にはレプチン濃度は一定となることから、体脂肪量以外の要因も肥育牛のレプチン濃度に関与していることが示唆された。本試験では血中レプチン濃度と脂肪交雑との間に正の相関があることが示唆された。そこで血中レプチン濃度を測定することにより、脂肪交雑を簡便に推定できる可能性がある。
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