研究概要 |
本研究は,反芻家畜の栄養学の観点から,遺伝子組換えによりルーメンプロトゾア体タンパク質の宿主に対する栄養価を改善することを最終目標とする.しかし,Tetrahymenaなどのプロトゾアは,遺伝子発現に際し,終止コドンなどがユニバーサルコドンから逸脱していることが知られているので,ルーメンプロトゾアについても,まずコドンの使い方を知ることが重要となる.本研究では,ルーメンプロトゾアの遺伝子発現時のコドンの使い方を確認することを目的として,平成9年度は、ルーメンプロトゾアEntodinium caudatumのmRNAからcDNAライブラリーを作成して,キチナーゼ遺伝子をスクリーニングし,それらの塩基配列を決定した.得られた塩基配列を、解析システムGene WorksのテトラヒメナコドンによりORFの可能性を分析すると,終止コドン(TGA)が含まれないため,ポリ(A)テ-ルを突き抜けてしまうことが判明した.他方,ユニバーサルコドンにより分析すると,38番目の塩基から1660番目までの162 3bからなる1つのORFが得られた。ORFの下流85塩基からポリ(A)テ-ルが見られた.また,終止コドンの上流20塩基目からポリ(A)シグナルが見られた.しかし,その配列は,通常のAATAAAではなく,AACAAAであった.コドンユ-セジは次のとおりであった.グルタミン:CAA,CAG;グルタミン酸:GAA,GAG;システイン:TGC,TGT;終止コドン:TAG.したがって、E.caudatumのキチナーゼ遺伝子のコドンはユニバーサル型と考えられた。アミノ酸配列から他の生物の遺伝子とのホモロジーを検討した結果,100種類の遺伝子と相同性が見られ,中でもKurthia zopfiiおよびClostridium thermocellumのキチナーゼ遺伝子と高い相同性が見られた.これに対して、塩基配列からみたホモロジーは,意外に低く、全部で25遺伝子との間でホモロジーが見られただけで、しかも、そのうちキチナーゼ関係の遺伝子は上記2種類のバクテリアのみであった。
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