研究概要 |
各種のストレスによって免疫機能が抑制されることが広く知られており、獣医畜産領域においても、家畜の移動に伴う感染症・発熱といったいわゆる「輸送熱」や過密飼育に起因する生体防御機能の低下などが問題となっている。本研究では、これを脳-免疫相関として捉えその中枢機構について、特に脳内インターロイキン(IL)-1に焦点を当てて研究を行い、以下の成果を得た。ラットおよびマウスを実験動物として用い、1時間の電撃や拘束ストレスを与え、脾臓リンパ球を分離して幼若化反応調べたところ、著明に減弱しており、ストレスによる免疫抑制の実験モデルとして利用できることが確認された。また、脾臓や肝臓からmRNAを抽出して各種サイトカインの発現を調べると、IL-6,IL-1、腫瘍壊死因子のmRNA発現が増加することも見出された。同様の末梢免疫応答は脳室内に微量のIL-1を投与した場合にも観察され、しかも、いずれも交感神経を外科的にあるいは薬物を用いて遮断することによってほぼ消失した。ストレス負荷やIL-1脳内投与が交感神経を活性化することは既に観察済みである。従って、上記のようなストレスによる末梢免疫応答は、脳内のIL-1を介して交感神経が活性化されることによって引き起こされたものと結論した。実際にストレス負荷後の脳内IL-1mRNAの発現をin situ hybridization法で調べたところ、大幅に増加することが確認された。今後は、ストレス応答が脳内IL-1の遮断によって消失するか否かを調べ、今回の結論を補強、発展させる必要があろう。
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