牛散発型白血病は未熟なT細胞やB細胞が腫瘍化した疾患であり、癌遺伝子c-mybが高発現している。散発型牛白血病の子牛型から樹立した腫瘍細胞株BTL-26は、エクソン9領域を欠損したc-myb遺伝子と12塩基配列のリピート構造を有するc-myb遺伝子が高発現しており、細胞の腫瘍化と密接に関連している。平成9年度は、散発型牛白血病発症牛におけるc-myb遺伝子内リピート保有状況とリピート配列の構造について検索し、以下の結果を得た。 1.牛散発型腫瘍発症牛20頭から染色体DNAを分離し、PCRにてc-myb遺伝子内のリピート構造を検索したところ、3頭から12塩基対からなる挿入配列を検出した。 2.腫瘍細胞株BTL-26を含め3頭から得られた12塩基対の挿入配列について挿入配列の構造を解析した。BTL-26株は、TGATCTGCCCGTからなる12塩基対が5回から17回と繰り返えされており、クローン間での繰り返し回数の変動も観察された。また12塩基対のリピート配列の間には9塩基対(TCTGGGCGT)からなる介在配列も存在した。 他の2株の内Pr1818株は、BTL-26と同様な繰り返し配列と介在配列を有していたのに比べ、Pr2410株は、12塩基対の繰り返し配列は同じであったが、介在配列の塩基対はTGGGCCCGTと異なっていた。12塩基対の繰り返し数は、Pr1818株では10回、Pr2410株では16回であった。ノーザンブロット解析の結果、これらリピート配列は蛋白に翻訳されていることが明らかとなった。今後リピート数の変動と細胞の腫瘍化との関係について解析する必要がある。
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