牛散発型白血病の子牛型から樹立された腫瘍細胞株BTL-26は、エクソン9領域を欠損したc-myb遺伝子と12塩基配列のリピート構造を有するc-myb遺伝子が共に発現し、65kDと80kDのc-Myb蛋白を産生する。平成10年度は昨年度に引き続きBTL-26株でのc-myb遺伝子内に検出されたリピート配列構造の不安定性とエクソン・スッキッピング機構について検索し、以下の結果を得た。 1. BTL-26株中には、TGATCTGCCCGTからなる12塩基対リピートが5回から17回と繰り返し観察されることから本リピートの安定性について検索した。その結果、本リピートは4回から17回と細胞のクローンにより、また培養世代により変動することが明らかとなった。 2. 12塩基対のリピート配列の不安定性を検索する目的で、BTL-26株でのDNA修復酵素の機能について解析した。その結果、12塩基対に結合する蛋白は検出されたもののBTL-26株が有するDNA修復酵素は他の牛散発型白血病株(Pr2181やYS1)同様に機能的であった。 3. 12塩基対リピートの不安定性とエクソン9のスキッピング機構との関係を知る目的で、12塩基対の構造を詳細に検討したところ、12塩基対の繰り返し構造内にc-Myb蛋白が結合する保存領域が存在することをみつけた。実際にCatアッセーにより12塩基対のリピートがc-Myb蛋白の結合部位となることを確認した。現在、c-Myb蛋白が12塩基対のリピート構造に結合し、それによりリピート数が変動してエクソン9の欠失が起こることを発現ベクターを用いたIn Vitroの系で検索中である。また腫瘍化との関係についても検索を進める予定である。
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