研究概要 |
平成9年度は血管を用いてパリトキシンの作用について以下の点を明らかにした。 1.ウサギ門脈平滑筋を用いてパリトキシンで誘発されるチャネルの性質を電気生理学的(ホールセルクランプ法)に検討した。血管平滑筋のパリトキシンチャネルはNa^+,K^+,Cs^+イオンを同程度透過し、LI^+はわずかに透過したが、Ca^<2+>は透過しなかった。パリトキシン電流は2,4-dichlorobenzamil,ニッケル、ランタンイオンでブロックされた。Na,K-ATPase阻害薬であるウアバインはパリトキシン電流を抑制した。パリトキシン存在下で細胞内Na^+が増加することが示唆されたが、パリトキシン自体は起電性Naポンプ電流を抑制せず、またパリトキシン存在下でもウアバインはNa,K-ATPaseを阻害できることが示された。 これよりパリトキシンはNa,K-ATPaseあるいはその付近に作用点を持つが、Na,K-ATPaseの機能自体は変化させないことが示唆された。 2.ブタ冠状動脈平滑筋におけるパリトキシンによる細胞内Ca^<2+>増加の機序を検討した。パリトキシンは電位依存性Ca^<2+>チャネルをブロックした条件でも細胞内Ca^<2+>を増加し、その増加は膜電位と細胞外Na^+に依存した。種々の試薬を用いた実験からパリトキシンは細胞内にNa^+を蓄積して脱分極を起こす結果、Na-Ca交換によるCa^<2+>排出が低下し、かつ逆向きNa-Ca交換によるCa^<2+>流入が促進されて細胞内にCa^<2+>を増加することが示唆された。 3.ブタ冠状動脈を用いて内皮存在下と非存在下でパリトキシンによる血管平滑筋の静止電位と細胞内Ca^<2+>の変化を観察した。この実験でパリトキシンは内皮細胞から一酸化窒素(NO)と内皮由来過分極因子を放出し、血管平滑筋でのパリトキシンによる脱分極、細胞Ca^<2+>動員および収縮を抑制することが示された。
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