研究概要 |
平成9年度は,健常犬を用いて,心・肝・腎臓の目的に応じた血行動態観察に至適な超音波アプローチ法などを確定した。 心臓においては,超音波ドプラ法による体表面からの非侵襲的測定法が確立されており本年度は断層法による左心拡大評価法,外科手術時に特に有用な経食道超音波プローブを食道内に留置して行う心拍出量の測定法,および心機能の指標として重要な心筋収縮力等の心係数の非侵襲的測定法を確立した。 腎臓においては,腎動脈描出のアプローチ法,およびドプラ法による血流検出について検討した。傍正中より探触子を縦断で走査することにより、腎動脈描出の解剖学的指標となる腹腔動脈および前腸間膜動脈が良好に描出でき,次いで前腸間膜動脈の尾方を横断面で走査することにより、腎動脈が描出できた。さらに前額面走査においても、腹大動脈より分岐する腎動脈が描出できた。さらに、パルスドプラ法による腎動脈血流量測定の信頼性を検討するため、本法による計測値と電磁流量計による実測値とを比較検討した結果、両者には良好な相関が得られた。 肝臓においては,健常犬における体表および経食道超音波プローブを用いた胃壁からの肝動脈,肝静脈および門脈系に対するアプローチ法および夫々の血管の鑑別法を検討した。その結果,超音波および血管造影の両検査法によって肝静脈と門脈の分布状況は明らかにできたが,肝動脈の走行は確認できなかった。血管造影検査法では,すべての血管は重複して可視化されるため,分枝血管の確認は困難であった。さらに、超音波ドプラ法を応用することによって,血管造影検査法では得ることができない血流の動的情報が非侵襲的に得られ,正常犬の門脈血行動態の諸指標値を明らかにした。
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