研究概要 |
ネコ免疫不全ウイルス(FIV)の日本分離株のうち、サブタイプA,B,C,Dの各1株のenv遺伝子を発現ブラスミドベクターに組み込み、大腸菌での蛋白の発現を行った。これらFIV Env蛋白は、感染ネコ血清によって認識され、FIVワクチンの基盤材料として利用できることが示された。FIVの増殖を阻害する薬剤を選定するため、シクロスポリン、タクロリムス、プロテアーゼ阻害剤(MK-639)についてFIV感染リンパ系細胞を用いて検討したところ、FIV増殖阻害効果はシクロスポリンおよびタクロリムスに認められ、MK-639には認められなかった。つぎにケモカインによるFIV増殖抑制効果を検討したところ、ネコのリンパ系細胞を用いた系では、FIV増殖抑制効果は、β-ケモカイン(MIP-1α,MIP-1β,RANTES)には存在せず、α-ケモカイン(SDF-1β)に存在することが明らかとなった。また、サイトカインのIL-10およびIL-12についても同様の検討を行った結果、FIV増殖抑制効果はIL-10には認められなかったが、IL-12の添加によって用量依存的に認められた。このことから、FIV増殖抑制剤として、シクロスポリン、タクロリムス、SDF-1βおよびIL-12が有望と考えられ、今後これらを感染ネコに臨床応用できるよう検討する予定である。また、FIV感染によるアポトーシスを抑制する薬剤を選定するため、抗酸化剤について検討したところ、N-アセチルシステインおよびアスコルビン酸にアポトーシス抑制効果があることが見いだされ、これら抗酸化剤によってFIV感染症における免疫不全症の進行を抑制できる可能性があることが示された。
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