研究概要 |
Spirulina plantensis(スピルリナ)は光合成による高い生産能力を有する可食藍藻である。申請者らは形質転換スピルリナを新規飼料添加物として利用することを目指し、すでにスピルリナにおける遺伝子導入の可能性があることを明らかにしている。そこで本年度では、スピルリナに対するエレクトロポレーション法を用いた形質転換の最適条件を検討した。まず、スピルリナ(strain N-39)を、SOT培地で温度30℃、光条件100μE/sec/m^2、OD1.0まで通気培養した後、細胞糸を細断し、その懸濁液にCAT遺伝子導入プラスミド(pHSG399)を制限酵素EcoRlで切断したベクターを加えた。ついでエレクトロポレーション処理をパルスの時定数(2.5,5.0msec)と実効電圧(2,4,6,8,10,12kV/cm)を変化させて行い、スピルリナ細胞内への外来遺伝子の導入を試みた。導入後30℃減光下でクロラムフェニコール(Cm)を含むSOT寒天培地で培養し抗生物質耐性株の生育を観察した。その結果、処理後20日では、Cm耐性株の生育は、pHSG399導入区で対照区に比べ良好だった。各種パルス条件下において、時定数5.0msec区で、2.5msec区よりも良好なCm耐性株の生育がみられたが、高電圧では生育が低下し、時定数5.0msec、実効電圧4kV/cmでもつとも活発な生育がみられた。さらに、遺伝子の発現をCATアッセイで、細胞内での導入遺伝子の存在をサザンブロットにより確かめたところ、Cm耐性株の生育状態とほぼ一致し、CAT活性はpHSG399導入区でのみ見られ、時定数5.0msec、実効電圧4kV/cmでもっとも高い活性が認められた。さらに、サザン・ブロットの結果から、pHSG399導入区で細胞内の導入遺伝子の存在が確認された。以上から、スピルリナへの外来遺伝子の導入・発現におけるエレクトロポレーションの最適条件(時定数5.0msec、実効電圧4kV/cm)が明らかとなった。
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