この研究では、マメ科植物の共生的窒素固定に係わる遺伝子群を植物と根粒菌(茎粒菌も含む)の双方で分離および構造解析を行い、最終的には非マメ科栽培植物に根粒形成能を付与し、窒素固定能を付けさせることが目的である。今年は、セスバニアの根粒形成関与遺伝子をいくつか分離した。enod40は根粒形成のごく初期に発現され、細胞分裂に関与するペプチドをコードすると考えられている遺伝子である。この遺伝子は、植物では普通1つしか見いだされない。ダイズは2つのenod40を持っているが、1つは機能していないと考えられている。私たちの用いているセスバニアでは、まだenod40が分離されていなかったため、PCR法を用いて分離することを試みた。その結果、少なくとも4種のenod40がクローン化され、これらの2つは、セスバニア固有のものと考えられたが、その他のものは、1つがダイズのものに高い相同性を示し、もう1つはソラマメのものに高い相同性を示した。4つのenod40が1つの植物で見いだされたことはこれまで報告がなく、大変興味深い。今後は、これらの遺伝子の機能がどのように異なっているのかに焦点があてられる。カルシウム依存性プロテインキナーゼ(CDPK)は、細胞のシグナル伝達に関与するタンパク質である。根粒形成のごく初期にカルシウム濃度の上昇が細胞内で起こることが、組織レベルや細胞レベルで観察されている。そこで、本研究ではセスバニアのcdpk遺伝子をクローン化して、根粒感染初期におけるその発現を調べることとした。今年度は、PCRによるクローン化を試み、3つの遺伝子を分離した。これらの1つはダイズやシロイヌナズナの遺伝子とアミノ酸配列で約70%の相同性を示し、他の2つは50%前後の相同性を示した。
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