研究概要 |
まず,すでに作製してあるアクロシン欠損マウスの精巣上体精子を用いて,卵透明帯への侵入・通過にプロテアーゼが関与しているかどうかを体外受精試験系で調べた。トリプシン阻害剤であるパラアミノベンザミジンが存在すると,野生型マウスと同様にアクロシンを欠損する精子でもほぼ完全に透明帯通過が抑制された。したがって,アクロシン以外のトリプシン様の基質特異性を持つプロテアーゼがマウス精子アクロソームに存在しており,それが精子の透明帯通過に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。 マウスアクロシン遺伝子のプロモーターとクラゲ由来のグリーン蛍光タンパク質遺伝子の融合遺伝子が精巣だけで発現しているトランスジェニックマウスを作製し,アクロソームだけが蛍光を発する精子を用いて非破壊的にその挙動を調べた。その精子は正常な受精能力を有しており,人為的にアクロソーム反応を起こさせた場合,アクロソーム内容物の大部分が僅か3秒ほどで放出されることが明らかとなった。この事実は,精子の透明帯侵入と通過に対する新たな研究の展開の引き金となると思われる。 精子の透明帯通過に関与すると考えられる新規セリンプ口テーゼの生体内機能を明らかにするために,すでに得られているTESP2とTESP4染色体遺伝子断片よりターゲティングベクターを構築して,ES細胞経由で遺伝子相同組換えを行い,キメラマウスを作製することに成功した。それらのホモ欠損マウスが得られ次第,表現型を検討する予定である。
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