昨年度確立した分子分類体系に基いて、各植物マイコプラズマ変異株を選抜した。またそれらの感染細胞に各種処理を試み、パルスフィールド電気泳動法によるゲノム及びプラスミドの大量かつ高度な精製法を確立した。この方法に基づいて、野性株のゲノム及びプラスミドを精製した。また、ゲノム及びプラスミドの遺伝子解析系を確立し、その性状を究明した。すなわち、ゲノミックライブラリーを作製するほか、プラスミドの遺伝子構造を決定した。ついで、その構造に基づいて特異的プローブを開発した。決定した遺伝子構造解析データに基づき、データベースより遺伝子の機能を解析した。この結果、約3kbpよりなるローリングサークル型のプラスミドを初めて見いだした。このプラスミドには複製酵素のほか、一本鎖DNA結合タンパク等がコードされており、このようなタイプのプラスミドはこれまでに例がない。また、この特異的プローブを用いて、植物マイコプラズマの各種変異株の感染細胞に特異的に発現されるDNAやRNA遺伝子の発現を調べた。これらのDNAおよびRNAを分離し、その性状を解析した。これらの知見は、植物及び昆虫の細胞内に共生または寄生して両生物間を水平移動する植物マイコプラズマの宿主決定や病原性に関わる遺伝子発現の制御メカニズムの解明に向けて大きな進展となった。今後以上の成果に基づき、植物・昆虫細胞における新規発現・制御系の開発に向けてさらに詳細な解析を進める。
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