研究概要 |
メタノール酵母単膜系オルガネラであるベルオキシソームと液胞は細胞内体積の大部分を占めているオルガネラである。ぺルオキシソームの形成機構を蛍光脂質を用いて解析している通程で、赤い蛍光色素であるFM4-64が液胞膜を特異的に生きたままで染色できることを見いだした。そこでぺルオキシソームターゲティングシグナルであるPTS1-を付加した緑色蛍光タンパク(GFP-PTS1)でぺルオキシソームを、FM4-64により液胞膜を、二重蛍光染色したメタノール酵母細胞を用いて、一度メタノール培地によって誘導しぺルオキシソームが、その代謝にぺルオキシソームが不要となったグルコースやエタノール培地に移した時にぺルオキシソームが分解されていく様子を、生きたままで観察することに世界で初めて成功した(Y,Sakai et al.,J.Cell Biol.,141,625(1998))。その結果、グルコース培地に移したときにはぺルオキシソームを液胞が直接取り囲むミクロオートファジーが、エタノール培地に移したときにはぺルオキシソームがまずオートファーゴソーム膜によって取り囲まれ、その後でオートファーゴソーム膜と液胞膜とが融合することによって起こるマクロオートファジーが起こることがわかった。ベルオキシソームの分解(peroxixome autophagy)をミクロオートファジーによって起こすことができないpag変異株(pag1-pag6)を取得した。このうち、pag4及びpag5変異株はマクロオートファジーによる分解も阻害されていた。pag変異株は、異種遺伝子産物をぺルオキシソーム・液胞内に蓄積させるために、極めて有効な手段・材料を提供するものと考えられる。一方、ぺルオキシソーム内に蓄積させるための有用な異種遺伝子産物として、糖尿病診断に有効なカビ由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(FLOD)について検討している。本cDNAを大腸菌内で発現させると細胞毒性を示し、高い生産性を得ることができなかった。本酵素のカビ細胞内での局在性を調べるとぺルオキシソームに局在していることがわかった。今後、メタノール資化性酵母のぺルオキシソーム内で生産することを目標として研究を行っている。
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