標準的パッチクランプ法のオルガネラ膜(小胞体膜)への適用に当たり、細胞核包を調整取得する操作からはじめた。単一膵腺腺房細胞は消化酵素(コラゲナーゼとトリプシン)を段階的に用いることで得られた。単一膵腺腺房細胞からNuclear envelope(NE)を得て、Endoplasmic Reticulum(ER)指向性蛍光色素(DiOC6(3))、および核酸指向性蛍光色素(Ethidium bromide)により染色し、共焦点レーザー顕微像を得た。また、パッチクランプ法Whole-ER recording(通常のWhole-cell recordingと同様の操作)を用いて親水性蛍光色素、ルシファーイエロ-、をERに注入すると、バルーン状に膨れ上がったER管腔が確認できた。このように形態的にもまたパッチクランプ法手技のうえからも、NEはER膜による閉鎖管腔を構成していることをみた。以上をふまえ、200pS・Maxi-Kチャネル、Cl-チャネル等、数種のイオンチャネルがER膜上に存在することを確認した。NE標本に膜容量測定法を適用し、ER管腔内Ca濃度により膜容量が変化することを見いだした。ER膜の出芽およびその崩壊と解釈される。このことは、出芽が細胞内カルシウム信号系と密接に連動していることを示唆した。いっぽう、200pS・Maxi-Kチャネルの阻害剤であるイベリオトキシンおよびパキシリンを細胞内に注入し、そのときの細胞応答を電気的にモニターした。Maxi-Kチャネルの抑制は特異なカルシウム応答を示した。つまり、G-蛋白活性化による細胞刺激に伴い、こうした阻害剤はカルシウム反応の膜電位依存性を促進させた。Maxi-Kチャネルは細胞内カルシウム貯蔵部位でのカルシウム分布制御に与ると考えられた。
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