研究概要 |
門脈-肝臓領域のNa受容機構の中枢投射を調べるため,この受容機構を刺激し,中枢でのニューロン興奮に伴い核内で産生されるFosタンパクを免疫染色した。受容機構刺激は以下の2つの方法を用いた。1)肝門脈内高張NaCl溶液投与に応答する肝臓求心神経の電気刺激。2)肝門脈内への種々の高張溶液投与。電気刺激および肝門脈内高張NaCl溶液投与により最終野,孤束核,第3脳室周囲核,視策上核等にFosが発現した。しかし,肝門脈内高張マンニトール溶液投与,あるいは高張LiCl溶液投与ではFosは発現しなかった。以上の結果より,門脈-肝臓領域のNa受容機構は延髄,視床下部の自律神経中枢および体液恒常性維持に関与する中枢に投射していることが分かった。さらに,このシステムは他の高張溶液には応答せず,Naに特異的であることが分かった。 長期の体液恒常性維持における門脈-肝臓領域Na受容機構の役割を調べるため,肝門脈あるいは下大静脈に等張あるいは高張NaCl溶液を2週間にわたり持続投与し,Naバランス,飲水行動,食塩嗜好性,血圧の変化を調べた。肝門脈投与群に比べ下大静脈投与群では,高張溶液投与時に有意に正のNaバランスを示し,血圧の上昇も大であった。また,肝門脈投与群では高張溶液投与時に食塩嗜好性が抑えられるが,下大静脈投与群ではこの効果は見られなかった。以上の結果により,門脈-肝臓領域Na受容機構は行動性調節を介し,長期の体液恒常性維持に重要な役割を果たしていることが分かった。
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