研究概要 |
門脈-肝臓領域Na受容器を介する反射性体液恒常性維持機構の求心路,中枢経路,遠心路,効果器,生理学的および病態生理学的役割に関し,種々の報告をしてきた。しかしその受容機構に関しては不明である。本年度の研究においては,受容機構を解明するため,麻酔下のラットを用い,種々の薬剤投与前後で肝門脈内高張NaCl溶液投与に対する肝臓求心神経活動の応答を調べた。この神経は高張NaCl,NaHCO_3に対し用量依存性に興奮するが、LiCl,マンニトールに対しては全く応答しない。従って,Na^+-sensitiveであると考えられ,各種Na^+transporterの阻害薬投与前後でのNaClに対する応答を検討した。高張NaCl溶液に対する応答は肝門脈内amiloride投与により影響されなかったが,ouabain, furosemide,bumetanide投与により用量依存性に抑制された。従って,門脈-肝臓領域Na受容機構にbumetanide-sensitive Na^+K^+2Cl^- cotransporterが関与する事が解明された。さらに,この神経はK^+濃度上昇に対し,用量依存性に応答する。この応答の生理学的意義を調べるため,肝門脈内に微量のKCl溶液を投与し,尿中K^+排泄を測定した。静脈内投与に対し,肝門脈内投与では有意に多くのK^+を排泄した。従って,門脈-肝臓領域bumetanide-sensitive Na^+K^+2Cl^- cotransporterを介する受容機構はNa^+のみならずK^+の恒常性維持にも関与していることが解明された。
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