研究概要 |
骨格筋の活動電位が横行小管に存在するL型Ca^<2+>チャネル(電位センサー)の構造を変化させ、細胞内Ca^<2+>ストア(筋小胞体)にあるリアノジン受容体(Ca^<2+>遊離チャネル:RyR)へと情報を伝達し、Ca^<2+>遊離と筋収縮を起こす。RyRに存在するSH基(約100)がチャネル活性に如何に関与するかの解明は活動電位がCa^<2+>を遊離する機構を知る上で重要である。精製Caチャネル蛋白質をplanar lipid bilayerへ組み込み、そのチャネル電流をパッチクランプ用増幅器(Axopatch 1D)で増幅、観察した。500/50mM KCl(cis/trans),20mMHEPES-Tris緩衝液を用い、SH基関与の可能性を分子レベルで直接検証した。Ca^<2+>に対する応答から、一つの蛋白が少なくとも二種類の性質の異なるチャネル活性(low-Poとhigh-Po)を示すことを発見した。low-PoチャネルはSH酸化剤(pCMPS)で活性化されhigh-Poと似た性質を示した。high-PoチャネルはSH還元剤(DTT)で抑制され、low-Poチャネルと似た性質に変化した。また、high-PoチャネルはCa^<2+>、カフェイン、ATPなどのチャネル修飾剤に応答したが、low-Po活性を示したチャネルは反応しなかった。これら無反応のチャネルは、pCMPSで活性化された後、チャネル修飾剤に対する応答性を回復した。一方、high-PoチャネルはDTTで還元後はCa^<2+>、カフェイン、ATPに応答しなくなった。これらの結果はCaチャネル蛋白質のSH基の構造変化がチャネル開閉や薬物に対する反応性など情報伝達機構に重要な役割を果たしている事を示唆している。
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