褐色脂肪機能における不飽和脂肪酸、特にドコサヘキサエン酸の意義に関する実験的研究

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09470014
• 研究機関: 旭川医科大学
• 研究代表者: 黒島 晨汎 旭川医科大学, 医学部, 教授 (90002774)
• 研究分担者: 大日向 浩 旭川医科大学, 医学部, 助手 (20233257)
• キーワード: 褐色脂肪組織 / リン脂質脂肪酸 / ドコサヘキサンエン酸 / アラキドン酸 / 飼育温度環境 / ミトコンドリア脂肪酸 / 脱共役タンパク質

研究概要

ドコサヘキサンエン酸(DHA)の褐色脂肪組織(BAT)機能における意義とその作用機構を知るために、ラットでこれまでの実績をふまえて次の実験を行った。
1)DHA+アラキドン酸(AA)投与実験:DHAのみの投与はBAT機能亢進時に認められる膜リン脂質AAの増加を低下させてBATのin vitroの熱産生反応を変化させないか、あるいはむしろ抑制させることが明らかにされたので、DHAと同時にAAを投与して両脂肪酸のリン脂質におけるレベルを増加させてBAT熱産生反応の促進をもたらすことが出来るかどうかを検討した。両脂肪酸の投与はBATのin vitro熱産生反応に影響を与えなかった。しかしDHA、DHA+AA投与群とも熱産性能の指標であるBATに特異的な脱共役タンパク質UCP1のmRNAの発現増大がみられた。この結果はDHA、AAなどの多不飽和脂肪酸がBAT熱産性能に影響することを示唆する。
2)幼若期飼育温度のBAT機能への影響:出生直後から10週間低温化で、その後10週間温暖下で飼育したラットは20週間温暖下で飼育したものに比べ、BATの増殖と熱産生反応の亢進が認められた。しかしUCP1 mRNAの発現、BATリン脂質DHA、DHA当たりin vitro熱産生反応には差がなかった。さらに48週後においても低温飼育群のin vivoノルアドレナリン非ふるえ熱産生が大であった。この結果は成長期の幼若期における寒冷馴化の影響は永続性があること、それが熱産生組織の増殖に基づくことを示す。
3)ミトコンドリア膜リン脂質DHAの測定を確立して、現在ミトコンドリアレベルでDHAの意義を検討している。

研究成果

• [文献書誌] Saha S.K.: "In vitro thermogenesis and phospholipid fatty acid composition of brown adipsetissue in tasted and refed rats"Jpn. J. Physiol. 49(4). 345-352 (1999)
• [文献書誌] Saha S.K.: "Adapfire modification of membrane phospholipid fatty acid composition and metabolic suppression of brown adipose tissue in heat acclimated rats"Int. J. Bio-meteorol. (in press). (2000)
• [文献書誌] Kuroshima A.: "Some facets of brown adipose tissue physiology"The76th Annual Meeting of Physiological Society of Japan Satellite Symposium on Advances in Environmental Physiology. 23 (1999)
• [文献書誌] 大日向 浩: "絶食・再摂食時の褐色脂肪組織熱産出と膜リン脂質脂肪酸組成の変化"第76回日本生理学大会予稿集. 162 (1999)
• [文献書誌] Saha S.K.: "暑熱馴化ラット褐色細胞組織(BAT)の熱産生及びリン脂質脂肪酸組成-特にドコサヘキサエン酸(DHA)の変化について"
• [文献書誌] Saha S.K.: "Influence of heat acclimation on rat brown adipose tissue thermogenesis and phospholipid fatty acid composition"Programme/Abstracts Xl International Symposium Pharmacology of thermoregulation. Board.17 (1999)
• [文献書誌] 大日向 浩: "ラット褐色脂肪組織熱産生のに対する生後環境温度の効果"日本生気象学会雑誌. 36(3). S50 (1999)
• [文献書誌] Kuroshima, A.: "Thermotherapy : Principles and Practice - Applications in Neoplasia, Inflammation and Pain -"Springer-Verlag Tokyo, Icn. (in press). (2000)