研究概要 |
褐色脂肪組織(BAT)の熱産生機能における膜リン脂質脂肪酸・ドコサへキサンエン酸(DHA)の意義を明らかにするために種々の実験条件下でラットBATのin vitro熱産生、リン脂質脂肪酸組成、BAT熱産生の指標・脱共役タンパク質共役タンパク質(UCP)について検討した。 (1)BAT熱産生の高い新生期に成熟期に比べてDHAとアラキドン酸(AA)が高いレべルを示す。 (2)DHA添加食はDHAを増加させたが、一方AAを減少させた。BATのin vitro熱産生反応は変化しないか、DHA添加が長期になるとむしろ抑制された。 (3)DHA欠乏食はDHAを減少させたが、AAは変化させず、in vitro熱産生には差がみられなかった。 (4)DHAとAAの同時添加食はBATリン脂質の両脂肪酸を増加させたが、in vitro熱産生には影響しなかった。しかしUCP1 mRNAの発現の増大がみられた。 (5)一酸化窒素(NO)合成酵素阻害剤(L-NAME)の慢性投与はBATを萎縮させ、BATの熱産主を減少させたが、DHAは変化しなかった。 (6)暑熱馴化と絶食はBAT熱産生産生を抑制し、DHAを減少させて、BATのin vitro熱産生とDHAレべルの間に正の相関が認められた。 (7)甲状腺機能低下(メチマゾール投与)はAAおよびDHAを減少させてBATの熱産生反応を抑制した。一方甲状腺機能亢進(トリヨードサイロニン投与)はBATの脂肪酸組成を変化させなかったがBATを増殖させ熱産主を促進した。 (8)出生後10週間低温(10℃)で飼育したラットは温暖下(25℃)で飼育したものに比べ20週後、さらに一年後においてもBATの増殖(DNA増加)によるin vitro熱産生、全身の非ふるえ熱産生が大であった。しかしUCP1、2,3mRNAの発現、DHAには差がなかった。以上の研究結果はBATの熱産生機能においてDHAが制御因子の一つである可能性を示す。
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