寒冷順化における肥満ラットの褐色脂肪組織の代謝調節

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09470019
• 研究機関: 兵庫医科大学
• 研究代表者: 堀 和子 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (30068514)
• 研究分担者: 加納 直行 兵庫医科大学, 医学部, 助手 (20152829) ; 中垣 育子 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (90084904) ; 辻田 純三 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (30104235) ; 佐々木 貞雄 兵庫医科大学, 医学部, 助教授 (20104276) ; 堀 清記 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (80068452)
• キーワード: 褐色脂肪組織 / UCP1 / 寒冷順化 / 脱順化 / サーモゲニン / GLUT4 / 肥満ラット / レプチン

研究概要

ラットの長期寒冷順化では、褐色脂肪組織(BAT)が増加し、BATにおいて脱共役蛋白質UCPlとミトコンドリアの増加、脂肪滴の小葉化、褐色脂肪細胞及び血管の増加を伴うが長期寒冷順化後の脱順化におけるBATの状態、生理機能の詳細はよく知られていない。昨年度の結果からWistar系雄ラットの長期寒冷順化後の脱順化では体重、副腎重量、摂食量等、生理的機能の面では温暖順化群と同じ状態になるがBATの形態、UCPl、GLUT4蛋白の発現量、呼吸商等は寒冷順化の状態を残している事が判明した。本年度は肥満雑ラット(fa/fa)とWistar系雄ラットを比較して長期寒冷順化後の脱順化時の代謝及び形態の変化を解析し、肥満ラットの脱順化における適応変化を検討した。
【実験】7週令の肥満(fa/fa)及びWistar系ラットを長期寒冷曝露(10℃,9週)し、完全に寒冷順比を行った後、脱順化を行い(25℃、2週)(1)体重、摂食量の変化、副腎及び肩甲骨間BAT(IsBAT)D重量、(2)血清の各種ホルモン値、血糖値、脂質量等の測定、(3)IsBAT、WAT、肝臓、骨格筋の形態、免疫組織化学的変化について温暖順化群(25C、9週)を対照として比較検討した。【結果】寒冷順化により、肥満ラットにおいてもIsBAT、副腎の重量は増加したが、摂食量は対照と差がみられず体重の減少率はWistar系に比べ著しく大きかった。脱順化ではWistar系と同様の傾向がみられた。寒冷順化でWistar系ラットでは血清レプチン、トリグリセリド(TG)の減少がみられたが肥満ラットではTG、血糖値の減少、T4の増加がみられ、レプチン、インスリンは常に異浩な高値であった。形態学的及びUCPl、GLUT4蛋白発現の変化はWistar系ラットの場合と同様の傾向がみられたが寒冷順化により肝臓の脂肪が減少し正常像に少し近づいた。以上の結果より、肥満ラットでは寒冷環境がエネルギー代謝に良い影響を与えていると考えられる。現在肥満ラットにおいて酸素消費量及び二酸化炭素生成量の測定、代謝量と呼吸商の解析を行っている。

研究成果

• [文献書誌] K.Hori: "Adaptive-changes in thermogenesis of rats by cold acclimation and deacclimation" Jpn.J.Physiol.48(6). 505-508 (1998)
• [文献書誌] 堀 和子: "ラットの長期寒冷馴化、脱順化におけるエネルギー代謝の変化及び褐色脂肪、白色脂肪及び筋肉組織に及ぼす影響" 第21回日本分子生物学会年会講演要旨集. 69. 520 (1998)
• [文献書誌] Ishigaki,T.: "Xanthine dehydrogenase and oxidase activities in liver of cold acclimated and deacclimated rets" Jpn.J.Physiol.48,Suppl.S228 (1998)
• [文献書誌] Sasaki,S.: "Intracellular ion environment in cold acclimated brown adipocyte." Jpn.J.Physiol.48,Suppl.S228 (1998)
• [文献書誌] Tsujita,J.: "Chances in the resting metabolic rate induced in rats by cold acclimation and deacclimation." Int.J.Biometeorol.43(in press.). (1999)
• [文献書誌] Kanoh,N.: "Effect of serotonin on ouabainsensitive,K^+-dependent,p-nitrophenylphosphatase activity in atrial marginal cells of normal and reserpinized guinea pigs." Histochemical.J.30. 263-266 (1998)
• [文献書誌] 堀 清記: "生理学入門" 共和書院, 294頁 (1999)