研究概要 |
ラット脳のperiaqueductal gray(PAG)に、ミューオピオイド受容体(MOR)に対するアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(AS ODN)(10μg)を48時間ごとに3回投与すると、MO mRNA量は有意に減少したが、デルタおよびカッパーオピオイド受容体(DORおよびKOR)mRNA量に有意な変化は認められなかった。また、DOR AS ODNおよびKOR AS ODN、ならびにMOR sense ODNでは、MOR mRNA量に有意な変化は認められなかった。なお、MOR AS ODNによるMOR mRNA量の原減少は、in Situ hybridization法による組織像でも認められた。次に、5種のGタンパク質αサブユニット(Gial,Gia2,GiQ3,Goa,およびGsa)に対するASODNの効果を、RT-PCR法とウェスタンブロット法で検討した。特異性が低いAS ODNに関しては、新たにASODNをデザインした。このうち、Goαに対するAS ODNで比較的特異性が高いものが得られた。このAS ODNで、Goa mRNA量が有意に減少するとともに、モルヒネの鎮痛効果は有意に小さくなった。このことから、Goaがモルヒネの鎮痛効果発現に関与していることが示唆された。なお、MORの内在性リガンドであるオピオイドペプチドの加水分解、不活性化阻止法について研究し、メチオニンエンケファリン(met-enk)、ロイシンエンケファリンなど5種のペプチドの脳膜標本における加水分解を3種の酵素阻害剤を用いることにより、ほぼ完全に阻止することに成功した。3種の阻害剤存在下では、met-enkの鎮痛効果はモルヒネより大きいことが明らかにされた。今後、内在性ペプチドの鎮痛効果に対する各種AS ODNの効果も研究する予定である。
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