研究概要 |
ミューオピオイド受容体(MOR)に対するアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(AS ODN)は、MORmRNA量を有意に減少させたが、デルタおよびカッパーオピオイド受容体(DORおよびKOR)mRNA量に有意な変化を生じさせなかった。また、DOR AS ODNおよびKOR AS ODN、ならびにMOR sense ODNでは、MOR mRNA量に有意な変化は認められなかった。なお、MOR AS ODNによるMOR mRNA量の減少は、in situ hybridization法による組織像でも認められた。次に、5種のGタンパク質αサブユニット(Giα1,Giα2,Giα3,Goα,およびGsα)に対するAS ODNの効果を、RT-PCR法とウエスタンプロット法で検討した。すでに報告されているAS ODNは、特異性が低かったので、新たにAS ODNをデザインした。このうち、Giα1とGoαに対するAS ODNで比較的特異性が高いものが得られた。これら2種のAS ODNで、標的タンパク質のmRNA量が有意に減少するとともに、モルヒネの鎮痛効果は有意に小さくなった。このことから、Giα1およびGoαなどがモルヒネの鎮痛効果発現に関与していることが示唆された。なお、MORの内在性リガンドであるオピオイドペプチドの加水分解、不活性化阻止法について研究し、メチオニンエンケファリン(met-enk)、ロイシンエンケファリンなど5種のペプチドの脳膜標本における加水分解を3種の酵素阻害剤を用いることにより、ほぼ完全に阻止することに成功した。3種の阻害剤存在下では、met-enkの鎮痛効果はモルヒネより大きいことが明らかにされた。今後、内在性ペプチドの鎮痛効果に対する各種AS ODNの効果も研究する予定である。
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