研究概要 |
この研究は、リンパ球で産生され神経・内分泌系に活性作用を示す因子をクローニングし、その生理的役割を明らかにすることである。前年度までの研究の概要は、(1)リンパ球培養メディウム上清分画中の因子が副腎髄質細胞からのカテコールアミン遊離を促進した、(2)その因子を部分精製し2つの活性分画を分取した、(3)それらに対するファジィー抗体を作成し、(4)その内の1つの活性分画に対するファジィー抗体を用いて、ウシ脾臓cDNAライブラリィーから20ヶの抗体陽性クローンを得た。 今年度は上記で得られた20ヶのクローン全ての部分塩基配列を解読した。GENBANK(またはEMBL)で既知蛋白質とのホモロジー検索を行った。その結果、60%以下ホモロジー(4ヶ;NY5,NY10,NY11,NY105)、60〜70%ホモロジー(4ヶ;NY2,NY12,NY18,NY19)、70〜80%ホモロジー(3ヶ;NY102,NY103,NY107)、80〜90%ホモロジー(5ヶ;NY13,NY15,NY16,NY101,NY110)、90%以上ホモロジー(4ヶ;NY4,NY7,NY106)であった。この中でNY16がIL-1 antagonistと87%、NY18がIL-2の5-flanking領域と65%のホモロジー、NY5は全く報告がなかった。それでcDNAウォーキング法を用いてこれらの全塩基配列の解読を試みた。その結果、NY16,NY18は各々IgMの新しいisoform及びornithine decarboxylaseのイントロン領域とホモロジーの高いシークエンス、そしてNY5はその直後に登録されていたserine proteaseの一種であることが判明した。現在、残りのクローンでまだ解読されていないクローンの塩基配列を解読している。さらにもう1つのファジィー抗体を用いてウシ脾臓cDNAライブラリィーから新たな陽性クローンを検索する予定である。 これらの検索の結果、新しい塩基配列をもった因子が見つかれば、その因子を用いて副腎髄質細胞の機能(カテコールアミン分泌、生合成及びノルエピネフリントランスポート活性等)に対する影響を検討する予定である。
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