研究概要 |
この研究は、リンパ球で産生され神経・内分泌系に活性作用を示す因子をクローニングし、その生理的役割を明らかにすることである。前年度までの研究結果の概要は、(1)リンパ球培養メディウム上清分画中の因子が副腎髄質細胞からのカテコールアミン遊離を促進した。(2)その因子をイオン交換カラムクロマトグラフィーにより2つの活性分画を得た。(3)それらに対する抗体(ファジー抗体)を作成した。(4)その中の1つのファジー抗体を用いて、ウシ脾臓cDNAライブラリィーから20ヶの抗体陽性クローンを得た。(5)これらの20ヶのクローンの部分塩基配列を解読し、GEN BANK(またはEMBL)で既知蛋白質とのホモロジー検索を行ったところ、4ヶのクローンは全く報告がない塩基配列をもっており、またサイトカイン関連のIL-1 antagonistやIL-2の5'-flanking領域と60〜70%ホモロジーのクローンが4ヶ見つかった。 今年度は、これらの中で興味深いクローンをcDNAウオーキング法を用いて、さらに長い塩基配列の解読を試みた。その結果、IgMの新しいisoform,ornithine decarboxylase及びserine proteaseと高いホモロジーシークエンスであることが判明した。一方、リンパ球由来因子を生化学的手法を用いて分離・精製を試みた。すなわちリンパ球培養上清液を硫酸アンモニウム沈殿後、それをDEAE-celluloseやSephauyl S-300ゲルろ過カラムにより分離した。すると少なくとも分子量が68,000、25,000及び10,000の3つの活性フラクションに分かれた。これをさらに逆相高速液体クロマトグラフィー(C18カラム)にて分離したが、完全な精製には至らなかった。現在、生化学的手法及び分子生物学的手法の両方にてリンパ球由来の新しい因子の同定に全力を注いでいる。さらにこのリンパ球由来因子の生理作用を副腎髄質細胞やその他の組織を用いて検討を加えている。
|