研究概要 |
sh-2変異マウスは内耳の有毛細胞等に形態学的異常がみられるが、その原因遺伝子は不明である。sh-2遺伝子座に対応するヒト17番染色体領域には、遺伝性のヒト類似疾患難聴(DFNB3)があり、両者は同一の原因遺伝子によると考えられている。聴覚平衡感覚障害を示すsh-2マウスを利用し、この原因遺伝子座近傍の物理地図の作成および候補遺伝子の検索を行った。 詳細な遺伝地図が作成されたので、YAC、BACを用いた物理地図の作成を行った。YACライブラリーのスクリーニングにより、1Mbから1.5MbにおよぶYACのコンテイーグが得られた。同時に、BACクローンの解析系を行った。クローンのスクリーニングはYACのそれとほぼ同様に行った。プローブには先ずMit316,Mgl-1-L,Mgl-1,Mit26,Mit157を用いた。BACの構造解析、それぞれのBACの位置関係を明らかにするために、インサートDNAの両末端配列を単離し解析した。すなわち、末端のSTS化により得られたクローンを連結した。全体で21のBACクローンからなるコンティーグが得られ、それは組換え個体が得られない(sh-2が存在する)領域を完全にカバーしていた。 この連結BACクローン群を元に、エクソン領域を精力的にスクリーニングした。その結果、sh-2領域にsh-1難聴原因遺伝子である7型ミオシンと相同性をもつ新しいミオシン遺伝子(15型)を発見した。アクチン結合ドメインに変異が存在し、この遺伝子が原因遺伝子であると判断された。この成果はヒトのDFNB3の遺伝子診断の基礎をもたらすものと考えられる。
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