研究概要 |
研究目的に「聴覚平行感覚障害をもたらすsh-2はヒトの遺伝性難聴に対応する疾患モデルマウスであると考えられている。このsh-2変異遺伝子の単離を」をかかげた。成果として期待通り原因遺伝子・新しいミオシン遺伝子(15型)が単離された。 実施計画として、1)突然変異体の交配とその表現系の解析、と遺伝解析についての現在までの連捗状況、2)マウスのYACおよびBACクローンの単離と物理地図作成、3)候補遺伝子の検索と同定、をあげた。以下にその経過を概略する。 sh-2変異マウスは内耳の有毛細胞等に形態学的異常がみられるが、その原因遺伝子は不明である。sh-2遺伝子座に対応するヒト17番染色体領域には、遺伝性のヒト類似疾患難聴(DFNB3)があり、両者は同一の原因遺伝子によると考えられている。聴覚平衡感覚障害を示すsh-2マウスを利用し、この原因遺伝子座近傍の物理地図の作成および候補遺伝子の検索を行った。 詳細な遺伝地図が作成されたので、BACを用いた物理地図の作成を行った。BACクローン単離のためのプローブにはMit316,Mgl-1-L,Mgl-1,Mit26,Mit157を用いた。BACの構造解析、それぞれのBACの位置関係を明らかにするために、インサートDNAの両末端配列を単離し解析した。全体で21のBACクローンからなるコンティーグが得られ、それは組換え個体が得られない(sh-2が存在する)領域を完全にカバーしていた。 この連結BACクローン群を元に、エクソン領域を精力的にスクリーニングした。その結果、sh-2領域にsh-1難聴原因遺伝子である7型ミオシンと相同性をもつ新しいミオシン遺伝子(15型)を発見した。アクチン結合ドメインに変異が存在し、この遺伝子が原因遺伝子であると判断された。この成果はヒトのDFNB3の遺伝子診断の基礎をもたらすものと考えられる。
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