一連の研究から、MUK/MLK等と呼ばれる一群の特徴的な構造を有するプロテインキナーゼ群は、炎症性のサイトカインを初めとして、熱ショックや紫外線等の細胞ストレスにより活性化されることが知られているJNK経路の活性化因子であることが明らかとなった。本研究では、まずこれらが、JNKキナーゼキナーゼそのものであることを示した。また、これらのmRNAの量が刺激に依存して増加することを見いだし、ストレス応答におけるJNK経路の活性化の後期過程に、mRNAレベルでの調節が大きな役割を果たしている可能性が浮上することとなった。一方、JNK経路の初期過程に関わると目される細胞内因子を検索する目的で、MUKの結合タンパク質の検索を行い、MIPP及び3-3という2種の新規タンパク質を同定した。MIPPは、MUKに特異的に試験管内、及び細胞内で結合し、細胞レベルで、MEK依存的なJNK活性化を阻害する。細胞レベルでの高発現実験より、MIPPはMUKタンパク質を不安定化する事も明らかとなった。これらのことから、MIPPは、MUKタンパク質の安定化の制御を行っているものと考えられた。一方、3-3も、試験管内及び細胞レベルでMUKに特異的に結合し、少なくとも細胞内では、MUK依存的なJNK活性化を促進する事が明らかとなった。3-3によるMUKの活性化機構は不明であるが、MIPPとあわせ、MUKを介したJNK活性化経路の制御因子として働いていることが推測されるに至った。
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