研究概要 |
(目的)脳腱黄色腫症(CTX)の症状発現のメカニズムを明らかにするために高コレスタノール血症ラットを作成し、小脳、眼球、肝臓について組織学的検索を行い、さらに培養小脳細胞に及ぼすコレスタノールの影響を調べた。(結果)高コレスタノール血症ラットでは前房水コレスタノール濃度も上昇していたので、前房水の前後に位置する角膜内皮細胞・水晶体上皮細胞に及ぼすコレスタノールの影響を調べた。ウシ角膜内皮細胞・水晶体上皮細胞をトリプシン処理により分離して、初代培養を行い、その後1%エタノールに溶解した1,10μg/mlコレステロール添加群、1,10μg/mlコレスタノール添加群、1%エタノール添加群(コントロール群)に分けて培養を続けた。細胞内コレスタノール濃度をHPLC法で測定し、トリパンブルー法で細胞死を検討し、アポトーシス誘導をTUNEL法で解析し、アポトーシス断片化DNAの定量検出をApopLadder Ex/SYBR Green I法で行い、ICE,CPP32 protease活性を測定した。角膜内皮細胞・水晶体上皮細胞ともに10μg/mlコレスタノール添加群でコントロール群に比べコレスタノール濃度、細胞死、アポトーシス誘導、アポトーシス断片化DNA、ICE,CPP32 protease活性の上昇がそれぞれ観察された。(考察)以上の研究から、CTXでは神経細胞や眼の細胞にコレスタノールが蓄積し、アポトーシスが誘導され、細胞死に至ることが明らかとなり、またこれまで未知であったCTXの臨床症状発現にコレスタノールによるアポトーシスが関与していることが示されて、今後の治療法の開発に貢献すると考えられる。
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