研究概要 |
脳腱黄色腫症(CTX)はステロール27位水酸化酵素の障害による先天性の脂質代謝異常症で、血清コレスタノール値が上昇し、臆(特にアキレス腱)および神経系の黄色腫、小脳症状、錐体路症状、若年性白内障、痴呆などの症状が現れる。CTX患者の小脳症状、眼症状の機構解明を本研究の目的とした。コレスタノールが小脳(特にプルキンエ細胞)、角膜内皮細胞・水晶体上皮細胞の細胞死(アポトーシス)を起こすとの仮説をたて、これを実証する実験を行った。 (方法)ラットの小脳細胞、ウシ角膜内皮細胞・水晶体上皮細胞を各々初代培養を行った。1,10μg/mlコレステロール添加群、1,l0μg/mlコレスタノール添加群、1%エタノール添加群(コントロール群)に分けて培養を続けた。各群の細胞内脂質濃度はHPLC法で測定した。細胞の生存率はトリパンブルー法で測定した。細胞をTUNEL法で蛍光染色し、ACAS570レーザーサイトメーターでアポトーシス誘導を解析した。アポトーシス誘導の際のICE,CPP32、protease活性も測定した。 (結果)コレスタノール濃度は,小脳細胞,角膜内皮細胞,水晶体上皮細胞で、10μg/mlコレスタノール添加群でコントロール群に比べ有意に上昇した.また、細胞生存率が減少した。TUNEL法による解析で、小脳細胞,角膜内皮細胞、水晶体上皮細胞ともに10μg/mlコレスタノール添加群の核に強い蛍光が認められアポトーシスが誘導されていると考えられた。角膜内皮細胞、水晶体上皮細胞ともに時間依存的にICE,CPP32 protease活性が10μg/mlコレスタノール添加群でコントロール群に比べ有意に上昇していた。以上の結果は上記の仮説を実証し、CTX患者の小脳症状、眼症状の機構解明に寄与する研究成果をあげた。
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