研究概要 |
我々は、1994年に遺伝性神経変性疾患Machado-Josephe病(MJD)の原因遺伝子(MJD1)を世界に先駆けて同定し、MJD1遺伝子内のCAGリピートの異常伸長がMJD発症の原因であることを明らかにした。本研究は、同定したMJD1遺伝子をもちいてMJDの発症機構を明らかにすることを目的とし、以下の成果を得た。 I.培養細胞を用いたCAGリピート発現モデルの開発。ラット神経細胞株PC12に、79リピートからなるポリグルタミンをコードするCAGリピートをテトラサイクリンで発現誘導が可能な細胞株を樹立し、その形質を生化学的に解析するすことによって、ポリグルタミンの核内凝集体がSEK1というストレス応答性のキナーゼを活性化し神経細胞死の誘導の引き金となっていることを明らかにした。 II.トランスジェニックの手法を用いたMJDのモデル動物の開発。ドロソフィラの複眼細胞に特異的に伸長したポリグルタミンを発現させ、複眼の変性を示すドロソフィラの作成に成功した。続いて、染色体上に種々の欠失した領域をもつ変異体約150系統との遺伝的交差を行い、複眼の変性を増強する系統と抑制する系統をそれぞれの複数系統得た。現在これらの責任遺伝子の同定を行っている。 III.ゲノム内に存在する新規の伸長したCAG/CTGリピートの同定。ゲノム内に存在する伸長したCAG/CTGリピートを簡単にクローニングする方法を開発し、健常人に高頻度で存在する伸長したCAG/CTGリピートを含む遺伝子座を17q21.3領域に同定する事に成功し、その遺伝視座をERDA1(expanded repeat domain,CAG/CTG1)と命名した。
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