研究概要 |
近年,多くの標的遺伝子破壊マウスが作出されているが,その中にはヒトの疾患モデルとして有用なものが少なくない。最近,CCAAT/enhancer-binding protein(C/EBP)ファミリーと呼ばれる転写調節因子群に属する因子の標的遺伝子破壊マウスが広範な肝機能障害を示すことが明らかになってきた。同遺伝子ファミリー各メンバーの標的破壊マウスにおける病態の解析およびその治療法の検討を目的として,報告者らが従来より研究を行ってきたアンモニア解毒系のオルニチンサイクル酵素遺伝子の発現異常の解析を行った。(1)C/EBPα遺伝子標的破壊マウスの病態の解析-C/EBPα標的破壊マウスは低血糖により出生後数時間で死亡することが報告されていたが,これに加え,オルニチンサイクルの5種類の酵素のうち,4種類の酵素のmRNAがC/EBPα標的破壊マウス肝臓において低下していることを示した。さらに,蛋白質レベルでも同様の低下が見られた。一方、in situ hybridizationでは,肝小葉内のmRNA分布に異常が見られ,高い発現部位が正常の門脈域から肝小葉中間部にシフトしていた。また,同マウスは低血糖に高アンモニア血症を併発していることを明らかにした。(2)C/EBPβ標的破壊マウスにおけるオルニチンサイクル酵素遺伝子のホルモン応答性の障害の解析-C/EBPβ標的破壊マウスの初代培養肝細胞において,オルニチンサイクルの2つの酵素遺伝子のグルココルチコイドおよびグルカゴンに対する応答性がほぼ完全に消失していることを明らかにした。一方,対照遺伝子の各ホルモン応答性には異常が見られず,特異性が確認された。今後,マウス個体レベルで,ホルモン応答性に異常が見られるか否か検討する予定である。
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