今までの研究によりサイクリンキナーゼインヒビターp57KIP2遺伝子がこの疾患の原因であることを突き止めた。今回の成果は、ベックウィズ・ウィードマン症候群患者の解析を国内でさらに15例、英国と共同でさらに約67名行った。その結果、前者で2名、後者で6名の患者にp57KIP2の変異が見つかった。今までの変異の結果をまとめると、患者ではC末付近に位置するグルタミン、スレオニンリッチなQTドメインが常に欠失しており、タンパクとしてこの領域が重要であることが示唆された。この事を細胞レベルで証明するために患者変異株を用いて機能解析を行なった。一つは変異株のp57KIP2タンパクを細胞で発現させ核移行を観察すること、さらにこれらの変異株にリン酸化の阻害活性があるのか観察することである。その結果、コントロールに用いたCdk阻害ドメインが欠失している変異株(N末にあるのでQTドメインも欠失している)では核移行能、リン酸化の阻害活性両方とも失われていることがわかった。一方、Cdk阻害ドメインは残り、QTドメインのみが欠失している変異株ではリン酸化の阻害活性はあるものの、核移行が行われないことがわかった。すなわち、QTドメインの変異は細胞レベルでも核へ移行できないという形で正常に機能しないことが証明された。p57KIP2遺伝子の発現制御機構を明らかにするために、周辺領域のゲノム解析を行った。ゲノム解析ではKip2遺伝子を含むP1クローンの整列化を始めた。その結果、約10kbセントロメア側に新たな遺伝子MH遺伝子、ILP遺伝子が見つかった。マウスにも同領域に同じ遺伝子があり、解析の結果非定型的にインプリントを受けていることがわかった。テロメア側は約30kbへだてて、KvLQT遺伝子が隣接している事がわかった。
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