研究概要 |
Beckwith-Wiedemann症候群の原因遺伝子としてp57KIP2を特定したが、さらに症例を増やした。全症例数は共同研究を含め91名になり、変異を認めた患者が10名だったので頻度は11%になった。変異の傾向として常にQTドメインが欠失していることがわかった。そこで変異の機能解析を細胞レベルで行った。その為に、患者変異体を細胞に導入して解析した。その結果、患者変異体は欠失している領域によりリン酸化の阻害活性が失われている例、失われていない例があったが、両者共通に細胞質から核への移行ができないという形で正常に機能しないことがわかった。次に、p57KIP2及びそれに隣接する遺伝子群の胎児性腫瘍における変異について調べた。ウィルムス腫瘍患者のp57KIP2の解析を行ったが、欠失、再編等は見いだされなかった。ついで、50例につき直接シーケンスを行い、変異の観察を行ったが変異は見いだされなかった。ところがmRNAの発現は、少数例であるがほとんど発現していない例が半数以上を占めた。さらに、p57KIP2に近接して存在する遺伝子IMPT1,IPL,ORCTL2Sについて、胎児性腫瘍41例の変異解析を行ったところ、ORCTL2Sにはウィルムス腫瘍1例でミッセンス変異、肝芽腫1例と副腎腫瘍1例にLOHを認めた。次に、ヒト及びマウスp57KIP2遺伝子を含む周辺領域のメチル化の解析を行った。この遺伝子を含め約10kbの領域でのDNAのメチル化を制限酵素部位を用いて解析したところ、マウス遺伝子では予想通り遺伝子本体、上流を含め父方由来アリルのメチル化、母方由来アリルの非メチル化が観察された。一方、ヒト遺伝子では父方アリルのメチル化部位を明確に見いだすことができなかった。
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