研究概要 |
これまでにcomparative genomic hybridization(CGH)法,fluorescence in situ hybridization(FISH)法,マイクロサテライト法により,6か所の高頻度の欠失領域(1p,6q,9p,12q,17p,18q)と2か所の増幅領域(8q,20q)を検出したが,本年度は6q,12qにおいてさらに詳細に検討を加え,12qでは2か所(それぞれ1cM以内と650kb以内)の共通欠失領域を同定した。この領域については,YACおよびそれに由来するコスミド,BAC,PACによるコンティグを作成している。 6qにおいては,詳細な欠失地図の作成を行ない,3か所の共通欠失領域を同定した。現在,YACおよびそれに由来するコスミド,BAC,PACによるコンティグの作成にとりかかっており,うち1か所では共通欠失領域を500kb以内にまで狭めることができた。現在,6qにおいてはこの領域に照準を合わせて遺伝子の単離に取り組んでいる。 DNAミスマッチ修復異常の下流に位置する繰り返し配列を含むゲートキ-パ-遺伝子の異常として,本年度はbcl-2 associated X protein(BAX)遺伝子の異常の検索を行い,大腸癌,胃癌,子宮内膜癌ではTGFβRIIとIGFIIR同様に異常がみられたのに対し,膵癌ではBAXを含め,いずれの遺伝子にも異常がみられないことを明らかにした。膵癌の発生・進展にはこれら以外の遺伝子異常が関与しているものと考えられた。 10qにマップされた新しい癌抑制遺伝子であるPTEN1の異常を各種癌において調べたが,子宮内膜癌で非常に高頻度の異常が見られたのに対し,膵癌では異常は全く見られなかった。この遺伝子の異常は膵における発がんには関与していないものと考えられた。
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