研究概要 |
6qにおいて3か所,12qにおいて2か所の合計5か所の共通欠失領域を特定し,これらの内3か所についてはYAC,BACによるコンティグを作成した。12q21は最少2個の互いに重なり合うYACクローンでカバーでき,3Mb以下と推定される。また,12q22-q23.1では最大650kb,6q21では約500kbの共通欠失領域が同定された。後者の2か所ではBACによるsequence readyのコンティグができており,塩基配列決定の作業を進めている。また,ESTをもとに発現している遺伝子のスクリーニングを行い,12qにおいては2個の候補遺伝子について異常の有無を調べたが,構造異常は見られなかった。しかし,12q21のDUSP6遺伝子では,多数の膵癌細胞株で発現の減弱や消失が観察されたため,発癌との関連の可能性があるものと考えられ,現在,発現の消失している細胞株に正常遺伝子を導入するため,アデノウイルスへの組み込みの過程にある。 遺伝子診断による早期発見の試みとして,ERCP施行中に採取した膵液中の細胞を用い,FISHによる診断を試みた。膵癌で高頻度に報告されている9p,17p,18qの欠失と8q,20qの増幅を指標にして調べたところ,FISH法が非常に有効であり,かつ18qの欠失が初期に生じている異常であることが明らかになった。この結果はSMAD4の異常が発癌の初期に重要な働きをしていることを強く示唆する結果である。 この他,SMAD4,p53,p16等の異常のある膵癌細胞株をスクリーニングし,アデノウイルスに組み込んだこれらの遺伝子を導入することにより,膵癌細胞株に対する造腫瘍性抑制効果が見られるか否かを検討している。
|