研究概要 |
本年度は、山陰地方の病院より、種々の胎齢(8週-40週)のヒト胎児肝を収集し、細胞接着分子、特にE-cadherin,alpha-catenin,beta-cateninの発現を免疫細胞化学的に検討した。その結果、肝内胆管は原始肝細胞に由来し、胆管板、遊走胆管細胞、未熟胆管の順に分化していた。E-cadherinは胆管板の細胞質に強く、遊走胆管細胞の細胞質に弱く、未熟胆管の細胞膜に強く発現していた。alpha-cateninは胆管板の細胞質に強く、遊走胆管細胞の細胞膜に中等度に、未熟胆管の細胞膜に強く発現していた。 beta-cateninは胆管板の細胞質に弱く、遊走胆管細胞の細胞膜に強く、未熟胆管の細胞膜に強く発現していた。この様に、肝内胆管の発生過程において、E-cadherin,alpha-catenin,beta-cateninの発現の部位、強弱に差があり、E-cadherin,alpha-catenin,beta-cateninの発現が肝内胆管の発生に重要な役割を果たしていることが示唆された。この結果は、欧州肝臓学会の学会誌であるJournal of Hepatologyに受理され、印刷中である。 次に、膵α-アミラーゼのタンパクとmRNAの発現を、免疫組織化学とin situ hybridizationで検討した。その結果、胆管板、遊走胆管細胞、未熟胆管の胆管細胞に膵α-アミラーゼのタンパクとmRNAの発現を認め、肝細胞では、胎生20週までの原始肝細胞に発現を認めた。この事実は、膵外分泌腺、肝内胆管、原始肝細胞の発生の類似性を示し、発生過程におけるcell lineageを考える上で重要な所見と思われた。また、胎生20週までは肝内胆管細胞と原始肝細胞は膵α-アミラーゼの発現があり、20週以後両者の細胞分化が相違してくることを示した。この結果は、米国肝臓学会の学会誌であるHepatologyに投稿中である。
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