研究概要 |
種々の胎齢(8週-40週)ヒト胎児肝で、E-cadherin,alpha-catenin,beta-cateninの発現を免疫細胞化学的に検討した。その結果、E-cadherinは胆管板の細胞質に強く、遊走胆管細胞の細胞質に弱く、未熟胆管の細胞膜に強く発現。alpha-cateninは胆管板の細胞膜に強く、遊走胆管細胞の細胞膜に中等度に、未熟胆管の細胞膜に強く発現。beta-cateninは胆管板の細胞質に弱く、遊走胆管細胞の細胞膜に強く、未熟胆管の細胞膜に強く発現。肝内胆管の発生過程において、E-cadherin,alpha-catenin,beta-cateninの発現の部位、強弱に差があり、これらの発現が肝内胆管の発生に重要な役割を果たすことが示唆された。これは、欧州肝臓学会の学会誌に発表された(J Hepatol 1998;28:263-169)。次に、膵α-アミラーゼのタンパクとmRNAの発現を、免疫組織化学とin situ hybridizationで検討した結果、胆管板、遊走胆管細胞、未熟胆管の胆管細胞に膵α-アミラーゼのタンパクとmRNAの発現を認め、肝細胞では、胎生20週までの原始肝細胞に発現を認めた。この事実は、膵外分泌腺、肝内胆管、原始肝細胞の発生の類似性を示し、発生過程におけるcell lineageを考える上で重要な所見と思われた。また、胎生20週までは肝内胆管細胞と原始肝細胞は膵α-アミラーゼの発現があり、20週以後両者の細胞分化が相違してくることを示した。この結果は、肝臓学の国際誌に掲載された(Liver 1998;18:313-319)。また、胆管発生過程で、癌遺伝子産物C-ERbB-2とHGFの受容体であるMETの発現があることを発見し、これらは肝内胆管の発生に重要であると考えられた。それぞれの結果は2つの病理学国際誌に掲載された(Hum Pathol 1998;29:175-180.Histopathology 1998;33:325-331)。また、機会があり、現在の肝内胆管の発生・発生異常の知見をまとめた(Tohoku J Exp Med 1997;181-19-32)。
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