研究概要 |
特発性間質性肺炎・肺線維症(idiopathic interstitial pneumonia/pulmonary fibrosis;IIP/IPF)と発癌の関係を解明するため、肺癌合併、肺癌非合併IIP/IPFにおいて、発癌性芳香族炭化水素などの代謝に関与する酵素(CYP1A1;microsomal epoxydehydrolase,inEH:gultathiones-transferase,GSTMl)遺伝子の多型性を検討した。[対象・方法]臨床的に診断された肺癌合併IIP/IPF(n=15)、肺癌非合併IIP/IPF(n-26)、そして肺疾患を有さないコントロール群(n=103)を対象として、末梢血有核細胞からDNAを抽出し、各酵素遺伝子多型部位を含む断片をPCRで増幅、解析を行った。[結果]CYP1A1では、ホモ接合性変異型は稀で、ホモ接合性野生型、ヘテロ接合性の頻度についても3群間に有意な差は認められなかった。mEHエキソン3については、ホモ接合性変異型が肺癌合併・非合併IIP/IPFで40、46%とコントロール21%に比べ高く、非合併IIP/IPFでは統計学的に有意であった。さらにGSTM1エキソン5欠損型の頻度は肺癌合併・非合併IIP/IPFの両者で27、65%と著しく異なっていた。[考案]GSTM1エキソン5欠損型、mEHエキソン3ホモ接合体変異型では肝癌発生の危険率が高いとされている。今回の検討では、いずれも肝癌非合併IIP/IPFに高く、とくにGSTM1エキソン5欠損型の頻度が著しく高率であった。これらの多型はIIP/IPFの場合は慢性炎症・線維化病変を促進するものと考えられる。一方、肺癌合併IIP/IPFでは解毒・代謝能が保たれており、むしろ炎症・線維化部における扁平上皮化生を促進、肺癌発生を高めている可能性が想定された。
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