研究課題/領域番号 |
09470054
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
深山 正久 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (70281293)
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研究分担者 |
鹿島 健司 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (70292729)
弘中 貢 自治医科大学, 医学部, 助手
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キーワード | 肺線維症 / 肺癌 / 線維化 / 発癌 / 遺伝子異常 |
研究概要 |
特発性間質性肺炎・肺線維症(idiopathic interstitial pneumonia/pulmonary fibrosis)における高癌化状態の機構を解明するため、肺線維症の改変気腔上皮の癌遺伝子・癌抑制遺伝子異常の解析を行った。これまで我々の研究で明らかになったことは、肺癌合併例では非合併例に比べ、改変気腔を構成する上皮の中で扁平上皮化生巣の頻度が増加している一方、扁平上皮化生細胞については異型度、Ki67標識率、p53 陽性率に違いがないことである。今年度は、改変気腔上皮の質的異常をさらに評価する目的で、レーザーキャプチャーマイクロダイセクションシステム(LCM)を用い標本中の化生上皮病変を選択的に採取、同部位の癌遺伝子・癌抑制遺伝子異常の解析を行った。[対象・方法]肺線維症を合併した肺癌切除例18例、肺癌非合併肺線維症肺生検5例。ホルマリン固定パラフィン包埋標本の薄切標本をヘマトキシリン染色後、LCMを用い、微小組織を採取、DNA抽出を行った。K-ras遺伝子変異、p16遺伝子メチル化の有無についてPCRを用いて検討を加えた。[結果と考案]微小切片(細胞核100個)からのDNA断片の増幅は技術的に困難で、K-ras遺伝子変異については、肺癌合併例3例でリンパ節・癌・扁平上皮化生巣を同時に評価することができた。いずれの検体においても変異はみられなかった。また、p16遺伝子メチル化についても、肺癌合併例5例、非合併5例いずれにおいても扁平上皮化生、気管支上皮にメチル化はみられなかった。現在のところ、肺癌合併例の改変気腔で増加している扁平上皮生巣に癌遺伝子・癌抑制遺伝子異常が集積しているという事実は認められない。この結果は、むしろ、扁平上皮生の頻度の上昇そのもの、あるいは上昇を来す体質的素因の違いが、肺線維症の高癌化状態の原因であることを示している可能性がある。
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