研究概要 |
ヒト下垂体細胞、ヒト下垂体腺腫における転写因子と諸種レセプターの関わりを明らかにすることを目的とする本研究において、平成9年度は以下の諸点を明らかにした。 免疫組織化学的に、二重染色により下垂体前葉細胞でEstrogen receptor(ER)は、prolactin(PRL)との共存が、thyroxine receptor(TR)はGHとの共存が、retinoid X receptor(RX)γはTSHとの共存が認められた。ER,TR,RXRγとも核に染色され、これらが核結合性の転写因子であることが確認された。GH,PRL,TSH細胞にはPit-1が核内に認められ正常ヒト下垂体細胞におけるそれぞれの遺伝子上流域おけるPit-1とER,TR,RXRγとの協調作用(synergistic action)が示唆された。一方、下垂体腺腫では、免疫組織化学的にPRL産生腺腫ではERとPit-1の共存が確認され両者の協調作用が確認された。特にTSH産生腺腫ではPit-1とRXRγの共存は細胞レベルで初めて明らかにされ、両者の協調作用を示唆する知見として注目された。一方、細胞膜に存在するレセプターは、量的要因と思われるが免疫組織化学な検出が困難であり、non-radioisotopic in situ hybridization(ISH)を施行しその細胞レベルでのmRNA発現を検討した。本年度は、ISHによりdopamine receptor(D2R)mRNAがPRL産生腺腫に、growth hormone releasing receptor(GHRHR)mRNAがGH産生腺腫に高頻度に発現されていることを確認した。これら細胞膜レセプターに関してはIn situ RT-PCR法を含め現在更に検索中である。また、今年度は技術的にもISHと免疫組織化学の二重染色法を確立し、同一切片上で同一細胞内でのmRNAと蛋白の共存の有無の観察が可能となった。本法は、次年度よりの細胞レベルでの詳細な機能解析に活用される。我々は、次年度以降Pit-1を中心とした転写因子と諸種レセプターの協調作用を更に明らかにするとともに、最近次々と明らかにされてきている下垂体転写因子、Prop-1、PTX-1、などに関する解析のため免疫組織化学、ISH,In situ RT-PCRなどを準備中である。
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