研究概要 |
Ratにmethylmercury chloride(MMC)を投与し、MMCにより誘発される脳での障害の機序を分子レベルで解明するために、種々のapoptosis関連蛋白をWestern blotにて検索した。さらにMMC投与によるrat脳での遺伝子の発現の変化の検索を行った。生後8WのWKAHratをMMC投与群と対照群に分け、症状の変化を観察し、10、17、24日目にsacrifficeした。脳における病理学的変化、小脳顆粒細胞におけるapoptosisの程度をTUNEL染色により検索し、蛋白を抽出してWestern blotを行なった。その結果apoptosis関連蛋白はMMC投与後24日目に変化しているものが多く、全体の傾向としては中毒初期ではapoptosisに関して抑制的に働くBDNF、Trk Bは増加しており、促進的に働くRIP、CAS、Fas ligand、Bad、Caspase9は減少していた。次にapoptosis発現初期のrat脳からRNAを抽出し、その後mRNAに精製した後、比較・検討を行なった。その結果、発症時にup-regulateしている遺伝子およびdown-regulateしている遺伝子が得られた。このうちapoptosisに関連している遺伝子としてはprotein kinase Cγ,insulin receptor substrate2,interleukin13,cyclophilin等が増加しており、これらの遺伝子はapoptosisに対して抑制的な機能を持っていた。 今回の解析からMMC投与rat脳において中毒初期に変動する分子としては、apoptosis関連蛋白ではapoptosisに対して代償性に機能していることが推察された。また得られた遺伝子の中には機能の未知の遺伝子が9個含まれており、今後MMCにおける脳障害において関連する重要な遺伝子が存在するものと考えられた。
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