研究概要 |
HLAの多型性は特定の疾患の感受性を規定していることが明らかにされている。このHLAの疾患感受性への関与の機構を,HLA分子と抗原性ペプチドの結合性,T細胞の活性化を指標に解析した。 1.日本人に高頻度に見られ,各種疾患の発症と相関を有するHLA-DR4及びHLA-DR9分子について,これらに結合するペプチドのアリル特異的アミノ酸配列(モチーフ)を決定してきた。現在,HLA-DR9と連鎖不平衡にあるHLA-DQ9分子について,ペプチドのアリル特異的モチーフを解析している。これまでの解析では,アミノ末端に疎水性アミノ酸,アミノ末端から7又は8番目にThrを有するモチーフが推測され,更に解析中である。 2.白樺花粉症の発症は,HLA-DR9と相関しそして花粉中の17kDaフラグメントが主要な病因性抗原である。HLA-DR9を有する患者のリンパ球を用いた解析では,17kDaフラグメントの3個所にT細胞エピトープが認められ,そしてそこにはHLA-DR9結合モチーフが存在していた。 HL-DR9を有さない患者では,17kDaフラグメントの15〜26番目のアミノ酸配列を含むペプチドにT細胞エピトープが認められ,HLA-DQ1分子を介してT細胞を活性化した。そしてそのペプチドにはHLA-DQ1結合モチーフが含まれていた。 3.Vogt-Koyanagi-Harada病はメラノサイトに対する自己免疫疾患であり,HLA-DR4と相関する。メラニン合成に関わるTyrosinaseの193〜203番目のアミノ参配列を含むペプチドが患者T細胞を活性化するエピトープであった。そこにはHLA-DR4結合モチーフが含まれていた。 HLAと疾患発症の相関の分子機構の一つとして,HLA分子による病因性ペプチドの結合が関与する可能性が推定された。
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