研究課題/領域番号 |
09470060
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
片桐 一 旭川医科大学, 副学長 (10041823)
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研究分担者 |
小林 博也 旭川医科大学, 医学部, 助手 (90280867)
佐藤 啓介 旭川医科大学, 医学部, 講師 (10250549)
木村 昭治 旭川医科大学, 医学部, 教授 (00250548)
青木 直子 旭川医科大学, 医学部, 助手 (60301983)
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キーワード | HLA分子 / HLA分子結合ペプチド / 疾病感受性 / アリル特異的結合モチーフ |
研究概要 |
HLA分子の疾患感受性への関与の機構を、HLAと抗原性ペプチドとの結合性、T細胞の活性化等を指標に検討している。これ迄に、日本人に高頻度にみられ、各種疾患の発症を規定するHLA分子について、これらの分子との結合に関わるペプチドのアリル特異的モチーフを決定してきた。そして疾患発症に関わるペプチドを明らかにし、それらの結合モチーフについて解析している。 1. 白樺花粉症の発症は、HLA-DR9と相関し、花粉中の17kDaフラグメント(Betv1)が主要な病因性抗原である。HLA-DR9を有する患者、有しない患者のそれぞれに、特徴的なフラグメント上のT細胞エピロープを明らかにし、そしてDR9又はDQ1結合モチーフの存在を明らかにした。17kDaフラグメントにはアイソタイプが存在している。明らかにしてきた8個所のT細胞エピトープの2個所で、4種類のアイソタイプ間でアミノ酸の置換が認められた。それぞれの患者のIgEと反応するエピトープが17kDaフラグメントの3個所以上に認められた。これらのIgEエピトープの一部は、T細胞エピトープと部分的に重複していた。IgEエピトープとT細胞エピトープとの対応をさらに検討している。 2. Vogt-小柳-原田病(原田氏病)は、HLA-DR4及びHLA-DR53と強い相関を有し、主に眼のメラノサイトを標的とする自己免疫疾患である。メラニン合成酵素であるTyrosinaseペプチド(193番目から203番目)は患者のHLA-DR4を介してT細胞を活性化し、他の患者のT細胞もこのTyrosinaseペプチドに反応した。このペプチドにはHLA-DR4結合モチーフが存在し、原田氏病発症の病因性ペプチドの1つとみなされた。 3. 日本人のインスリン依存症糖尿病(IDDM)はHLA-DR4と相関し、膵ラ氏島B細胞を標的とする自己免疫疾患である。NODマウスはヒトIDDMの実験モデルであり、マウスクラスII分子I-A^<g7>を介して起こる膵島炎を特徴としている。T細胞を活性化する標的抗原としてGlutamic acid decarboxylase 65(GAD65)が注目され、ヒトの場合も主要な標的抗原の1つと見なされている。このGAD65の特定部位のペプチドがI-A^<g7>を分子を介してT細胞を活性化し、そして4週令のNODマウスに投与すると、マウス膵島炎の発症が抑制されることを明らかにした。 これらの研究は、HLA分子の病態への関与の一端を明らかにし、将来のペプチド療法の基板となるものと思われる。
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