研究課題/領域番号 |
09470064
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中川 和憲 九州大学, 医学部, 講師 (50217668)
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研究分担者 |
中島 豊 九州大学, 医学部, 助教授 (50135349)
居石 克夫 九州大学, 医学部, 教授 (70108710)
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キーワード | 動脈硬化 / 血管内皮細胞 / 血管新生 / 血管内皮細胞増殖因子 / 遺伝子導入 |
研究概要 |
動脈硬化発症・進展機構の解明に関しては、血管壁構成細胞(平滑筋細胞や内皮細胞など)や、そこに浸潤してくるマクロファージ等の機能変化(ないし障害)、さらにそれらを制御している細胞相互情報伝達機構の点からの詳細な解析が不可欠である。そこで本研究では、動脈硬化の発生・進展、血栓形成に深く関与している粥腫破綻機序、動脈硬化内膜内血管新生機序の病態学的意義について、培養細胞あるいは手術および剖検症例を用いて解析を行った。 九大病院冠動脈硬化標本での血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の局在と検討した結果、VEGFは、硬化巣内の平滑筋細胞やマクロファージに陽性であった。また形態学的解析の結果、これらの発現強度と動脈硬化巣内膜内の血管新生数に有意な相関関係が観察された。さらに、DCA標本の検討から新生血管数と内膜再狭窄の期間には相関が認められた。以上より、平滑筋細胞やマクロファージから放出されたVEGFが内皮細胞に作用し、硬化内膜での進展・修復に重要な役割を果たしていることが示唆された。また、培養血管平滑筋細胞による実験において、血管新生関連因子などの発現に関わる転写因子のデコイ遺伝子の遺伝子導入により、具体的にはAP-1に対するデコイ導入でVEGFの発現を完全に抑制できることを明らかとした。またすでに、癌細胞ではこうしたデコイ導入によって複数の遺伝子を同時に効率よく抑制できることを確認しており、血管壁の細胞についても、成長因子に限らず過凝固に関わる諸因子について、この手法による細胞機能の制御について検当中である。 以上のことから、硬化内膜での平滑筋細胞、マクロファージ、内皮細胞の相互の機能はVEGFなどを介したクロストーク等により制御されており、我々が検討しているデコイ療法が動脈硬化の進展の予防の有用な手段の一つとなりうることが示唆された。
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