昨年度の結果を基礎に、LPS10ngでウサギ胸腔に起こした炎症における第2相の遅延型透過(2時間をピークとする)について、そのメカニズムを検討した。まず、この炎症の場で早期(2時間)を中心に産生されているサイトカインを見ると、TNFαおよびIL-8であり、これらの因子は炎症2時間をピークとなっていた。一方、IL-1βの産生は6時間にピークが見られた。また、この炎症における遅延型血管透過の各種拮抗物質による抑制を検討した。まず、抗TNFα抗体、IL-1レセプター拮抗因子、抗IL-8抗体については、抗TNFα抗体および、抗IL-8抗体によって遅延型血管透過亢進が抑制されたが、IL-1レセプター拮抗因子は無効であった。また、正常のウサギ胸腔にTNFαまたはIL-8を注射するといずれによっても I型ヒスタミンレセプターに対する拮抗剤で抑制されない遅延型の血管透過亢進が見られるが、TNFαによる透過は抗IL-8抗体によって抑制されるのに対し、IL-8による透過は抗TNFα抗体、IL-1レセプター拮抗因子などでは抑制されず、抗IL-8抗体によって抑制された。また、TNFαを注射した胸腔中にはIL-8が産生されていることが確認された。したがって、遅延型タイプの透過の最終的なmediatorはIL-8であろうと推測された。一方、好中球枯渇ウサギでは、LPS炎症における遅延型透過は消失することは昨年確認したが、この好中球枯渇ウサギにTNFαまたはIL-8を注射すると、TNFαによっては血管透過亢進は起こらず。IL-8によって血管透過亢進を起こすことができた。また、好中球枯渇ウサギではTNFαによるIL-8産生は誘導されず、この面からもIL-8が遅延型透過を起こしているであろうと推測された。
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