研究概要 |
1.日本住血吸虫感染後肝線維症の免疫遺伝学的解析 本研究開始までにすでに、中国江西省玉山県でのフィールド調査を完了し、住民のうち10年以上の病歴を伴う慢性住血吸虫患者の超音波による肝実質変化の診断およびDNA解析のための採血を完了していた。また、肝繊維化のレベルからこの集団ではgradeOが44名、grade1が81名、grade2,3が105名存在するということが判明した。これら各群のHLA-DRB1,DQA1,DQB1のDPA1,DPB1のタイプを今回すべて決定し、gradeOとHLA-DRB1*1101との正の相関を、また、grade2,3とHLA-DPA1*0202との負の相関を発見した。さらに前者のHLA-DR1101の者では、血清中の抗虫卵IgG1抗体価が有意に上昇しており、このHLAにより免疫応答性に変化が起こることが示唆された。 2.再感染抵抗性と宿主免疫応答性との関係 中国江西省Poyang-Hu周辺の高度侵淫地における集団治療後の再感染抵抗群あるいは、感受性群の住血吸虫に対する免疫応答性の相違を検討し、住血吸虫感染に対する防御免疫のメカニズムを解析することを目的として研究を行なった。対象としたのは、湖周辺の2つの村の住民約3000人でこのうち、治療前、および治療後の虫卵検査結果の明らかな者を抽出し、水接触度や、抗体価などを考慮し、再感染抵抗性の者109名および対照とする群103名を分別した。これらの人について、HLA-DRB1を調べ、HLA-DR1202が抵抗性に1201が感受性になること見出した。この2つのHLAには、抗原ペプチド結合性に僅かな違いしかないため、今後の解析に有用であると考えられた。
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