研究概要 |
TH1型感染防御免疫の誘導に必須の内因性インタフェロンγがリステリアのエスケープ因子であるLLO(リステリオリシン)により誘導される機構を解析した。マウス腹腔滲出細胞をリコンビナント(r)LLOで刺激培養すると、IL-1,TNF,IL-12,IL-18などの産生が誘導された。最終的なインタフェロンgの産生は、IL-12、IL-18に対する中和抗体添加で抑制された。IL-12KOマウス、IL-18KOマウスの脾細胞では、特にIL-12KOによりLLO刺激でのインタフェロンγ産生は消失した。これらの結果から、LLOがマクロファージに作用してIL-12の発現を誘導することが、TH1型防御免疫の誘導の初期段階として重要であることが判明した。LLOによるインタフェロンgの誘導はポリミキシンBでは抑制されないが、抗CD14抗体で抑制され、またC3H/HeJではC3H/HeNに比べ有意に低いことから、LPSのシグナル伝達経路と同様の機構が関与することが示唆された。膜タンパクを標識したマクロファージ系細胞株に作用させたrLLOは、約140kDaのタンパクに結合していることが示された。またLLOの各ドメインを欠失させた標品を用いた検討から、第4ドメインの存在は必要であったが、コレステロール結合性は必須ではなかった。以上の結果から、フルサイズのLLOは、膜コレステロールへの結合とは異なる分子量14万のタンパクに結合し、LPSによるシグナル伝達と類似の過程を経てIL-12やIL-18の発現を誘導するものと考えられた。近年明らかにされたToll-likeレセプターの関与も示唆され、この観点からの解析の必要性がある結果であった。
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