研究概要 |
院内患者を生命の危機に陥れるような細菌群の中で、緑膿菌は抗生物質に対して高度の自然耐性を示し、また一方緑膿菌に有効な薬剤に対しては容易に耐性を獲得する。その主たるメカニズムの一つは薬物および毒物を細胞外に排出することによる耐性化である。我々は緑膿菌にMexA-MexB-OprMの三種の膜タン猜る排出が存在するすることを発見し報告してきた。本研究ではこの排出系のサブユニット蛋白質が抗生物質排出にどのように役割を果たしているかを明らかにするために次のような実験を行った。(i)すでにクローン化された排出ポンプ遺伝子mexA,mexB,もしくはoprMの各々を遺伝子操作によって破壊するした。これらの変異株を用いてニューキノロン、クロラムフェニコール、βラクタムその他の薬剤のMICを測定したところ、これらの変異株はこれらの薬剤に対して親株以上に感受性となった。このことはメックスポンプが薬剤耐性に関わっていることを証明するとともに、野生株でもこのポンプが機能していることを明らかとしたものである。(ii)次に重要なことは、この排出系による抗生物質の排出の様子をリアルタイムで測定することである。そこで本研究ではDMPなどの蛍光物質を排出の基質として用い、蛍光物質の細胞への浸透及び排出を蛍光の変化として即時的に測定した。その結果mexM変異株でもっとも高いのDMPの蓄積がみられ、mexA及びmexB変異株がそれに続き野生株ではDMPの蓄積はほとんど測定されなかった。この結果は上記の抗生物質感受性と完全に一致した結果であった。これらの事実から、緑膿菌ではメックスポンプが働くことによって抗生物質を排出し、その結果細胞内抗生物質の濃度が低下するため、耐性となることが証明できたものである。
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